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の議論では、1994(平成6)年の地方自治法の改正時のものが記憶に新しい。制度改正の中心は財産を所有するための法人格の取得であったが、(設立の許認可権者は市町村長)当時2つの問題点が指摘されていた。第1に、「財産を所有し共有地である複雑な相続手続き等の権利関係を整理するためだけであれば、財団の設立等による一括管理などの工夫ができるはずである」という点であり、第2に自主的な活動団体であるのに「法人格の取得により、ますます行政との関係が近くなり、行政の下請け機関のイメージが強くなるのではないか」という点であった。
しかし、実際には法人格の取得とは無関係に、行政施策の地域における実施という視点から見ると、行政との距離は近くならざるを得なかったのである。行政にとっては、他に代替することのできない「地域の声」であり「地域における協働事業実施のパートナー」となっているからだ。
もちろん、都市部においては、組織率の低下が目立ち、町内会・自治会の組織率が5割以下の自治体もある。そうなると「回覧板の回らない」つまり「地域の声」として認知することのできない自治体も多くあることになる。
?A三鷹市の例
東京都三鷹市の場合を例に考えてみる。
三鷹市は都心から20?q、人口16万人、市域16.5km2のベッドタウンである。三鷹市の町内会・自治会の組織率は1997(平成9)年1月現在で49%である。近年の傾向としては阪神・淡路大震災の経験から、新たに町内会が組織される例もあり、ここ1〜2年で組織率は2%の増となっている。5割の組織率では、当然町内会・自治会の組織のない地域が半分あることになり、各種行政施策の実施について、こうした組織にのみ依拠することはできない。そこで市域を7つの地区に分けて、それぞれに複合施設のコミュニティ・センターを建設し、「コミュニティ行政」の展開を昭和40年代後半から推進してきた。(章末資料1「みたかのコミュニティの歩み」参照)
このコミュニティ行政の目的は、「近隣社会の生活環境の整備」と「新しい地域的な連帯感に基づく近隣生活、つまり人と人のふれあいのあるくらし」である1)。
この目標に向けて、地域ごとに「町内会・自治体、自主防災組織、消防団、青少年対策地区委員会、PTA、商店会」などの団体の推薦と関心ある個人による「住民協議会」組織を結成し、前述したコミュニティ・センターの管理運営を中心に活動を行っている。

 

 

 

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